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残業、残業で遅かった相方が、ある日、早く帰宅した。 「今日から残業がなくなった」 小さく投げられた石が大きな波紋を描くように、世の中の景気が傾いていた。 製造業である相方の企業にも波が押し寄せていた。 作るものを無くした企業は、ぽっかり穴が空いたかのように時間が空いた。 時間を持て余した相方は、仕事を終えて帰ると、ごろごろとトドのような姿でTVを見ていた。 それが、どうだろう。 週末、田舎のに帰ると、まるで水を得た魚のように働きだす。 草取りや庭掃きや枝落とし、雨どいのそうじ。 あまりの草の多さに業を煮やして、ホームセンターにすっ飛んで草刈り機まで買ったあとは、 おもちゃを手にした子どものようにウキウキと楽し気に庭の草や、山の草を刈る。 家を包む庭や裏山は、見る見るまに、きれいに刈られ、古墳わきの隠れていた小道が現われてきた。 荒れ放題だった山も庭も、散髪を仕立てのような青年のように、さっぱり若々しくなった。 田舎に来るごとに、景色と相方がイキイキと変化していた。 |
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つづく |