少しずつ目の前のこと 

 


その日から週末通いが始まった。

昔の家は収納が多い。

ましてや、捨てることに罪悪感を持つ世代の人たちが、とりあえずと溜めておいたものが山のように家 には詰まっている。

収納の扉を開くごとに衣類、雑貨、紙、布、他のガラクタが湧いて出ている。

「大変な整理を任せてごめんなさい。あるものはどうにでも処分してちょうだい。見ると捨てられない けど、見ないとだいじょうぶだから」と、電話口で言う母。

その言葉に従って、不要なものを集めては捨てに行き、捨ててはそこを掃除する。

ときどき、萎えそうになる気持ちを立て直してくれるのは、今まで気にも止めなかった庭の花や野の花 たち、そして時おり吹く、ここちよい風だった。

誰もいない家でも、何の手入れもしなくても、光と雨水さえあれば咲いてくれる庭の花たちを見てると 、何とかこの地を生かしたいと思う。  

つづく