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「子々孫々にいたるまで、守り通せよ」 この「神のお告げ」なる先祖の言葉が父を縛っていた。 それよりも、なによりも、父はこの土地と家を愛し過ぎていた。 家の居間から望む祖母山の風景が大好きで、飽きることなく眺めていた父。 だけど、現実は目の前にある。 兄のところへ行きたいと涙ぐむ母を目の前にして、父は苦しんでいた。 だけど、引っ越しはどうする?経済的余裕もない。そのあと、家はどうする? 「引っ越しは必要なものだけ持ってくればいい。お金が必要なら家を売ればいい」 いとも簡単そうな提案に、変化をおそれるガンコな父が、そう簡単に着いてゆけるはずがなかった。 そのとき、相方が言ったひとことが父を動かした。 「いつでも帰ってきてください。それまでぼくたちが守りますから」 |
つづく |