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この家の裏手の山には、前方後円墳がある。 と、言っても見かけは、ただのこんもりした小さな山なのだけど、幸か不幸か県指定になっている。 その昔、退職した祖父が兵庫県西宮市から家族を連れて故郷に帰ったとき、山ごと買い取り、家を建て たのだという。 山をくずしていたときにあらわれたのが、勾玉や土器で、はじめてそこが前方後円墳だとわかったらし い。 おそれ多くも、お墓だった土地に家を建てることになった祖父は、そこに祠(ほこら)を建てて、祀(ま つ)ることにした。 その祠には、当時の石工が彫った一文がくっきりはっきり書かれてある。 「神のお告げにより、子々孫々にいたるまで守り通すこと」 この家の養子である父は、このお告げを胸に刻み、家と土地を守り通した。 だれよりも、この地を愛したのは、子孫でもない父だった。 |
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つづく |